富士スピードウェイ

必ず日常業務に活かしたい。

タイヤ脱着をはじめ、アライメント測定、車高/キャンバー調整、ホイールの清掃/点検などをファクトリーの事前整備で体験した。車高を調整するメリットやキャンバー調整の必要性なども正しく理解できたので、お客さまへの説明に活かしていこうと思った。
部品の組み立てではグリスの塗り方など、次に分解することまで考え細かい所にも手を抜いてはいけないことを教わった。今回いろいろと学ぶことができ、私が扱う一般車にも応用できることが多々あった。調整作業の細かさ、しっかり作業する大切さ、分解・組み立てに対する姿勢をしっかり頭にたたき込んだ。さっそく会社に帰ったら、日常の業務に取り入れていこうと誓った。
もうひとつ、絶対に見習いたいと強く思ったのは、チームワークのこと。レースクルーの方々のチームワークを見ていて、その素晴らしさを思い知った。一人ひとりが連携し協力し合い、ひとつの目標に向かって一丸となる。それによって大きな結果が生み出される。自分の普段の業務でもC/A（カーライフアドバイザー）との連携などもっとチームワークを意識していこうと思った。

レースメカニックの真髄。

ファクトリーでの事前整備作業の中で、とても印象的だったのはアライメント調整。数ミリ単位の調整が行われていて、その繊細さや妥協しない厳しさに凄みさえ感じた。少しでもよい条件で走行できるよう、時間の許す限り作業を続ける姿勢と情熱。これは自分の普段の業務にも通じることで、これからはもっと細かい所まで気を配りこだわって作業していこうと思った。
サーキットでは、タイヤの管理の徹底ぶりが実に感動的だった。気温や路面温度など現在の状況に合わせ、タイヤ温度や空気圧を細かく調整する。整備の奥深さ、レースメカニックの真髄を垣間見た気がした。
一人ひとりが任された作業に責任を持ち、1秒でも早く、しかも確実に作業を行うという整備の基本は、自分の業務にもぜひ活かしていきたいと思った。お客さまに喜んでいただけるよう、しっかりと整備をしようと胸に刻んだ。
今回このプロジェクトに参加して、いままで知らなかったこと、気づいていなかったことも学ぶことができた。そして憧れだったレースの世界も体験できた。また機会があったらぜひとも参加したい。

「1G締め」から学んだこと。

プロジェクトに参加して感じたことは、レース車両の整備に求められる精度と細やかさだ。事前整備の実習では、足まわりの調整でいわゆる「1G締め」を体験した。ジャッキアップしてサスペンションのアームやブッシュを組み付けた後、ジャッキを下げてタイヤを路面に接地させてからボルトの本締めを行う。静止時の車両重量（＝1G）をかけた状態で締めつける。これにより、サスペンションが持つ本来のポテンシャルを発揮できるのだ。手間のかかる整備方法だが、足まわりの性能を徹底的に追求するレース車両では重要なノウハウになる。この1G締めに限らず、アライメントや車高の調整値の細かさ、注入する空気の湿度まで制御するタイヤメンテナンスなど、すべての作業が緻密で正確で、しかもスピーディだ。レース用という特別な車両の整備だが、何故この作業が必要なのか。どうしたら効率よくできるのか。それらを考え、より良い方法で実践する取り組み方は、普段の仕事にも絶対に活かせるはずだ。「整備」という業務の奥の深さと面白さを改めて実感することができた。

ひとつひとつの作業に責任を持つ。

多くの人の協力や熱い思いがつながり、レースは成り立っていると実感した。まさにレースはみんなのチカラの集大成だ。コンマ1秒の差で勝敗が決まってしまう。ひとつの作業がレース結果を左右することになる。だからこそひとつひとつの作業に責任を持たなくてはいけない。現場で緊張感の高まり、レース独特の雰囲気を肌で感じながら、そんなことを思った。
ピットへの搬入・設営、片付けはスタッフ全員で行う。もうこの段階から、ムダな動きや時間を使うことはない。
タイトな作業時間、限りなくシビアな調整、状況に合わせて変更するレスポンス、スピーディながら正確な作業。私の日々の業務にはない過酷なシチュエーションだが、安全を守るという点では共通する。プロジェクトの1週間は、学びの連続で頭はフル回転状態だった。驚くこと、納得すること、発見すること、実に有意義な楽しい時間を過ごした。それに仕事に対する思い、プロとしての仕事への関わり方も合わせて学ぶことができた。
この経験を通し、私自身もメカニックとしての覚悟を強く持ちたいと思った。

こだわりと熱意の整備。

自動車の整備という仕事に、今まで自分なりに一生懸命取り組んできた。今回、日産メカニックチャレンジでレースのメカニックを体験し、たくさんの刺激を受けたことで、ますます面白いと感じるようになった。
レース車両の整備体験は驚きの連続だった。ホイールアライメントの調整は想像以上に緻密で、わずか0.1mmの差を追いながら車両への影響を確認する。タイヤの空気圧管理も非常にシビアで、その日の気温や湿度により、タイヤ内の湿度、空気圧などをキメ細かく調整する必要がある。ブレーキローターの交換も行ったが、取付けのボルトがどの程度ダメージを受けているか、一本一本チェックしながらの作業だった。
どの整備作業にも徹底したこだわりをこめるレース車両のメカニック。しかも、予選前から決勝のあとまで、びっしりと詰まったタイムスケジュールの中で、こうした整備をこなしていく。もちろん、一人の力でできることではない。一人一人の熱意と、それを大きなパワーに変えるチームワークがあるから、レーシングチームのメカニックとして力を発揮できるのだ。この整備に対する姿勢と、チームとしての行動力。自分たちのテクニカルスタッフ業務にもぜひ活かしていきたいと思った。

感動のレースメカニック体験。

日頃から、レースの世界に詳しいわけではなかった。メカニックとして自分の可能性を広げたいと思い、このプロジェクトに参加した。
だから、事前整備期間からサーキットへ移動した後まで、自分にとっては新しくて刺激的なものばかりだった。たとえば、センターロック式のホイールで使うインパクトレンチを初めて手にした。タイヤを外すときには真っ直ぐ引き抜くといったコツにも納得。さらに、プロのレースメカニックの方のタイヤ交換の速さに圧倒された。また、一定の高さに素早くリフトアップできるエアジャッキは非常に効率的だと思った。そのうえで、アップ途中には絶対に作業をしないとか、作業完了後は必ず合図を送るとか、安全のための徹底した対策にも感心させられた。
テクニカルスタッフとして普段の仕事では、GT-Rの整備を担当させていただいている。レース車両との共通点や相違点を確認できて、大いに勉強になった。
レースのほうは、決勝2位で年間タイトルを獲得、という素晴らしい瞬間に立ち会うことができた。日産車が活躍するのを目の当たりにして、レースにこれほど感動できるとは思っていなかった。そして最後に印象に残った場面がある。決勝終了後、タイヤの磨耗状態をチェックするチームのメカニックの方たちがいた。レースは勝って終わりではない。次の勝利を想いながらタイヤのデータ取りをしている姿に、プロの意識を感じた。

新たなチャレンジの決意。

サーキット入りする前に4日程の事前整備があり、整備の実習やスーパーGTに関する講義が行われた。整備は、アンダーカバーやサイドカバーの取付け、エンジンオイル注入、ブレーキエア抜き、ホイール清掃、車高調整、アライメント調整などで、どれも一般車両でも実施する作業だ。しかし、レース車両ならではのやり方や調整の細かさは知らなかった点が多く勉強になった。ただプロジェクトに参加するテクニカルスタッフは9名いて、自分が作業する順番がなかなか回ってこない時もあった。そんな状況で一日目が終わる頃に、気付いたことがあった。
「待っているだけで良かったのだろうか？」 順番を待つ間に、自分が担当する作業の効率を考えたり、次の作業の予測を立てたり、あるいは安全な作業環境を確認したり、するべきことはたくさんあったのではないか。その思いは、サーキットへ移動してから確信に変わった。
ピット設営から、公式予選、決勝レースまで、ピット周辺はまるで戦場のような慌ただしさだ。そこで自分は次に何をするべきか、いつも考えながら積極的に関わっていかなければ、自分一人が取り残されてしまう。レースに挑むメカニックの方々が、いかに高い意識をもって取り組んでいるかがわかった。
これはレースに限らず、普段の業務でも同じだ。今するべき作業を常に考える。次に起こる事態を予測する。いつもの仕事の意識を、少し変えてみようと思った。テクニカルスタッフの自分にとって、新しいチャレンジが始まったと感じている。

自分自身の成長につなげたい。

GT300を間近に見て鳥肌が立った初日から、あっという間の1週間だった。ファクトリーでの事前整備でいちばん印象に残っているのはタイヤ交換。脱着時の動きをしっかりと頭の中でイメージしておかないと、スムーズに動けないのだ。時間のない中での作業には、イメージトレーニングと練習の繰り返しが必要だと思った。それと自分たちがいつも使っている工具との違いにとまどったが、レース用工具を手にすると不思議とワクワクする気持ちが湧いてきた。
ピットでは走行後のタイヤのデブリ除去や空気圧調整などを行った。ピット内で強く感じたことは、チームワークの凄さ。レースは表にはでない裏方の作業が重要で、勝敗を決めると言っても言い過ぎではないと実感した。
通常業務では経験できないファクトリー作業やピット作業を経験して、毎日の業務で忘れていた緊張感を思い出した。小さなボルトやネジにも細心の注意を払い作業する心構えも改めて取り戻した。この1週間の貴重な経験がモチベーションアップ、スキルアップとなり、きっと新たな自分へ導いてくれるだろうと思った。

整備士人生の糧にしたい。

今回参加した「日産メカニックチャレンジ」は、私にとって決して忘れることのできない人生最高の経験になった。幼い頃からクルマが好きで、いつかレースに参加してみたいという夢が叶ったのだ。日常では体験できないことばかりで、非常に刺激的な1週間だった。もちろんそれだけではなく、整備士としてとても有意義な勉強になった。
“小さなネジひとつでも気を抜いてはいけない。” “たった数秒のことにも、万全の準備を怠ってはならない。”と、改めて気づかされた。初心に戻るきっかけになり、いつしか忘れがちになっていた基本に立ち返ることができた。同時にクルマへの向き合い方がより一層深まったと思う。ますますクルマが好きになった。
作業で反省すべきこともあった。スピードが求められる作業の中、1点に集中しすぎてまわりが見えないことがあった。大きなミスにつながる可能性もあったのだ。ひとつのことに集中することも大切だが、全体を把握する力も必要だと感じた。
このプロジェクトで経験したこと、教えていただいたことを自分の力に変えて、これからの毎日の業務に励んでいきたい。