富士スピードウェイ

根底にあるのは、強固な信頼関係。

ファクトリーでの事前練習でレースの知識学習やレースメカニックが体験できたことは、レースに関しほとんど無知だった私にとって貴重な宝物となった。ホイール磨きをはじめ、4輪アライメント調整、リヤウイングの角度調整、アンチロールバー調整、タイヤ交換など、さまざまな作業が体験できた。それぞれ100分の1単位で調整が行われていて、驚いたと同時に憧れさえ感じた。レースメカニックのレベルの高さを見せつけられた思いだ。
今回はコロナ禍で2グループ制だったため、ピットに入ったのは決勝の日だった。本来なら予選・決勝と入れる予定だったが、残念で仕方がなかった。ピットではタイヤの着脱やホイール清掃などの作業が割り当てられた。驚いたことに走行後のタイヤ表面温度は約100度もあり、レースの過酷さを改めて知った。
チームは一人ひとり強い信頼関係で結ばれていて、シャキッとした雰囲気を感じた。この貴重な経験をいかし、自業務においては、安心・安全に乗っていただけるようサポートし、お客さまとの確かな信頼関係を築いていきたいと心に決めた。

妥協しない。こだわりを持つこと。

果たして日産メカニックチャレンジが実施されるのか、気が気ではなかったが、やっとこの5戦から参加できることになった。ただしコロナ対策上、観客はもちろん、ピットに入れる人数も制限されるといういつもと違うカタチで行われた。
メカニック作業の実地体験の他に、スーパーGTに関する座学もスケジューリングされていて、参戦するクラス別のマシンのことやレースの細かいルールまで学ぶことができた。いままで以上にレースを楽しめると思った。
ファクトリーでのトレーニングでは、ブレーキフィールドの交換やオイルの注入、タイヤの脱着作業などを体験。ひとつひとつの作業に気を抜くことなく、万全の注意を払わなくてはいけない。オイルや液が床に垂れないための工夫、入念なフロアの水平出しなど、すべての作業や調整に妥協しない姿勢には、驚きとともに感動的ですらあった。
いよいよサーキットのピット。張りつめた緊張感が漂う中、特に印象的だったのがタイヤ管理だ。実に緻密な調整が何度も行われていた。ピット内でしかわからない、大変な作業だと思った。私も日常業務の中で妥協せず、こだわりを持って作業をしていこうと決心した。

ピット体験と優勝体験、夢の出来事。

まずファクトリーで、キャンバー調整用のシムの装着など車両のアライメント調整を体験。タイヤの着脱にもチャレンジした。見るのと実際やるのとでは、大違い。あの手際の良さ、正確さ、スピード。レースメカニックの圧倒的なレベルの高さを感じた。
予選前日、明日の準備のためにサーキット入り。現場に到着するやいなや、とてつもなく緊張感がおそってきた。ひとつひとつの作業でわずかなミスも許されない状況なので、より一層の集中力を持たなければならない。予選スタートまでの限られた時間の中で、いかにマシンを最高の状態に仕上げるか。そのことを一人ひとりが責任を持ち、それぞれが情報を共有し、チームがより強くひとつにならなければ、0.01秒の世界では勝つことはできないと思った。決勝はピットの人数制限のため見学応援となったが、優勝という歓びにも立ち会うこともできた。
今回の日産メカニックチャレンジに参加して再認識したことがある。チーム内の情報共有の大切さ、責任の大きさを改めて痛感したことだ。今後も、よりレベルの高い整備士をめざしていきたい。

この緊張感をきっと忘れない。

プロジェクトに参加した一週間、自分の中で意識し続けていたのは“緊張感”だった。車両のセッティングでも、部品の組み付けにしても、最高の結果を求めて本気で何度でも取り組むという姿勢。その場には、自分が経験したことのない緊張感が満ちていた。
公式予選の10月3日、自分たちのテクニカルスタッフ（以下TS）グループはピットに入らず、予選の観戦というスケジューリングだった。観戦とはいえプライベートの時のように気楽には見ていられない。自分たちが整備したマシンが、いま目の前でタイムアタックを行っている。感動はもちろんあったが、明日の決勝では、今ピットで頑張っているTSグループの替わりに自分がそこにいるのかと思うと、不安と緊張感が高まっていった。
そして決勝日。今までに学んだことを生かし、自分のスキルと感覚を最大限に駆使してレースをサポートしなければならない。朝からレース終了まで、本当に緊張しっぱなしの一日だった。結果はなんと、我が56号車の優勝。疲れはいっぺんに吹っ飛び、これまでにない達成感を味わうことができた。
このプロジェクトで得たものは、本気で取り組む緊張感の大切さだ。その意識を忘れることなく、普段のTS業務をこれまで以上に深めていきたい。

ウイニングマシンをこの手で。

初日の座学や車両整備のレクチャーから始まり、決勝前日の公式予選まで、憧れのスーパーGTマシンとずっと一緒にいて、しかも自分の手で整備をするという幸せな一週間を過ごした。レース車両のきわめてシビアな測定や整備を学び、メカニックとして本当に貴重な体験ができたと思う。なかでもいい思い出になったのは、サーキット入りをした日だ。翌日の公式練習、予選に備えてすべてのチェックと調整を行ない、夕刻に車検を終えた。車検場からピットへ戻る時、自分が運転席に座ってマシンを移動させたのだ。ステアリングを握る手を通して、レース車両のポテンシャルをしっかりと感じることができた。
感激はそれだけではなかった。決勝当日、自分たちのグループはピットに入ることなくスタンドで観戦だったのだが、その目の前で我々の56号車が優勝したのだ。自分の手で整備したマシンが、いまスーパーGTという大舞台で勝利した。この思い出は一生忘れられない。そして、数々の貴重な整備体験や、全国から集まったテクニカルスタッフ仲間との交流も大きな財産になると思った。

リアル体験で出会えたプロ・スピリット。

サーキット入りする前に事前整備の期間があり、レース車両の整備を体験した。そのアライメント調整では、定規、ノギス、定盤等を使ってじっくりと行うアナログ的とも言えるやり方で少し驚いた。やはり最先端をゆくレースカーなら、たとえばCCDカメラ付きのアライメントテスターとか、高度な設備を使うのかと思っていた。実際には、ピットに持ち込める程度の機材で熟練者たちの目と感覚とノウハウにより、きわめて高精度な調整を行っていたのだ。
デジタル化された現代でも、人の感覚・経験・熟練がモノを言うケースはまだまだ多い。この日産メカニックチャレンジのプロジェクト自体もそうだ。レースカーの整備情報ならネットで簡単に手に入る。しかし実際の経験から得たものは、身についた知識の重みが違う。整備に対する思いの深さにまで触れることができる。
今回の体験で、レースに取り組む人達が皆、自分の役割に真剣に向き合い、要求されたレベル以上の結果で応える“プロ”集団だとわかった。そして、自分たちもまたメカニックの“プロ”だ。お客さまにクルマを安心して任せていただけるスキルをさらに磨き、整備への熱意を持ち続けたいと強く感じた。

ドライバーの命を預かる使命。

とてもためになったのが、GT500とGT300の車両の違いなどスーパーGTについて学ぶカリキュラム。実に細かなルールがあり、例えばタイヤは6セットまでしか使用できないとか、給油とタイヤ交換は同時にできないとか、ピットワークにもいろいろなルールが厳しく設けられている。初めて聞くことが多く、勉強になった。
ファクトリーでの事前体験で印象的だったのは、タイヤ交換。いままでTVで見ていただけだが、1秒を争う大事な作業を体験することができ感激した。
サーキットでは、タイヤの空気圧調整。1本1本微妙に調整され、細心の注意が払われていた。自分たちが普段整備している乗用車よりも、かなり低い圧レベルなので驚いた。予選がスタートし、自分たちで整備したクルマが走っている姿を見た時は、今まで味わったことのないほど感動した。
今回の体験は日常業務とは違いはあるが、ひとつのミスがドライバーの命につながると肌で認識した。店舗に戻った際は、このことを深く胸に刻み、正確な整備に取り組みたい。

驚きと感動の一週間。

テクニカルスタッフ（以下TS）として普段できないことにチャレンジしたくて、このプロジェクトに参加した。
9月28日からの前半4日間は、サーキット入り前の事前整備作業だった。初日はスーパーGTのレギュレーションを学び、その複雑さに少し驚かされた。翌29日は休日で、30日はアライメント測定やタイヤ脱着など整備の実技を体験した。そして10月1日午後から車両・機材をトレーラーへ搬入し、いよいよサーキットへ。
10月2日、富士スピードウェイでの初日はピットの設営から始まった。テレビなどでよく見るピットは、こうして作られるんだと改めて納得。それにしても、決勝に至るまでにこんなに事前準備が多いとはまったく知らなかった。
3日の公式予選では、我々のマシンは予選6位の好ポジションを獲得できた。自分達のグループはここまでで、別のTSグループへバトンを渡し、4日はスタンドで応援した。
今回、コロナ禍でさまざまな条件のもと、プロジェクトが開催されただけでも非常にうれしかった。ただやはり、参加するからには最終日までピットにいられたら最高なのに、と思ってしまった。

プロ意識、熱意、結束力を学んだ。

ファクトリーでの初日、とても反省することがあった。「部品や工具をクルマの中に置かない。工具はあった場所に戻す。部品は足もとに置かない。捨てる物はすぐ捨てる。」ごく当たり前のことだが、自社に戻ったらもう一度徹底しようと思った。
座学ではタイヤのことが気になった。レースでは天候や気温、周回数などを考慮してタイヤを選択するが、その選択によって順位が大きく変わってしまうこともあるという。タイヤの重要性を痛感した。レース本番でもタイヤは、路面温度によって細かく調整していた。
レースはドライバーが速いだけでは勝つことはできない。ドライバーが安心してチカラを発揮できること、そのためには常にマシンの良い状態を維持する整備力が不可欠だと思う。「安全に、そして1秒でも速く走るために、細かいことを積み重さねる。あきらめない、妥協することはない」というチームの結束力・決意が伝わってきた。
自分たちもお客さまに安全に安心して乗っていただけるよう、確実に整備すること。それがプロの整備士としての誇りだと思った。