【にっちゃんレポート】
DATSUN フェアレディ240Z
再生プロジェクト VOL.2

2013年12月1日(日)、約40年の時を超えて「世界最速」と呼ばれたクルマが、その走りが蘇る。
その名は「DATSUN フェアレディ240Z」。1971年のサファリラリー優勝車として世界を魅了した名車の再生活動を、
にっちゃんは1年間追い続けました。そこには、クルマを愛してやまない社員たちの姿がありました。

記録しながら分解する

5月、日産テクニカルセンターの整備室で、DATSUN フェアレディ240Zのレストア作業が始まりました。
クラブ活動は社員の自主活動のため、業務時間外での土曜日が基本活動日。今年から加わる新規メンバーも多く、やる気も十分です。

当日の作業工程を確認したあと、新規メンバーは磯部から作業に関するレクチャーを実施。普段はクルマの製造や整備を担当していない社員もいるため、工具の使い方からしっかりと教えていきます。クラブ発足から8年、これまで怪我や事故が起きなかったのも、こういったメンバー間の細かなケアが支えています。

整備室では、各パートリーダーの指示のもと、240Zの写真を撮りながらパーツの取り外し作業が進行。組み立て時に迷わないように1つずつ記録を残しながら進めていきます。クルマによっては1,000枚以上撮影することもあるとか。外したパーツもどこの部品かわかるように保管していきます。

2013年からの新メンバー:坊垣

「できることを全力で、そしてちょっとずつ広げていく!!」という意気込みで参加しています。
参加のきっかけは、子どもがクラブ活動で土日も学校に行くようになり、自分も土日も活動的に使おうと思っていたこと。そんなとき、今年の参加募集を目にしました。240Zが優勝した1971年は自分の生まれた年。親近感もわき、参加を決めました。夏のクラブイベントでは、家族サービスができて、よかったです。
普段は分解や組み立てといったメカ的な仕事はしていないので、クラブでいろいろやらせてもらえて勉強になるし、何より楽しいです。丹精込めて再生した240Zを、ぜひ皆さんにも見ていただきたいです。

徹底的な資料研究

レストア作業のなかでもっとも大変な作業のひとつが、「当時の状態を確認する」こと。クルマの見た目はもちろん、内部の部品や破損状況、車体に貼ってあるステッカーの損失具合まで、細かく確認して再現していきます。
その作業をリードしているのが、右の写真でステッカーを手にしている湯川や、下のコラムでご紹介している荒川。特に湯川は自他ともに認めるラリーカー好きで、個人でも旧車のラリーカーを所有しているほど。以前、にっちゃんでも紹介させていただきました。

実はこれまでのレストア車に貼ってあるステッカーの多くは湯川が用意したもの。当時のステッカーを探し、市販されていないものは復元したり、自らのコレクションの中から出しているそうです。
彼らを中心に雑誌や映像記録などを徹底的に調べあげ、クラブが目指す「ゴール直後のクルマの状態」をカタチにしていきます。クルマによっては、ゴール後に興奮したドライバーが屋根に乗ったときの凹みまで再現。この徹底した研究とこだわりが、レストア車に命を吹き込んでいきます。

資料の読み込みは数10時間に及ぶことも:荒川

レストアの仕様、つまりあるべき姿を決めるためには、当時の報告書や雑誌、宣伝映像、販促資料など数100ページ、数10時間も資料を調べます。保管されている状態=正解ではないので、正しい姿を探し出すのは大変な作業だし重要なことです。今後再生する人がわかりやすいよう、資料の目次もつくっています。
数十年も前の資料は探すのも大変。ラリー車などはスタート時、ラリー中、ゴール時でランプの仕様が違ったりするので、どの資料を採用するか迷う場合もあります。今回の240Zは当時の改造仕様書がなかったので、前後の年の仕様情報から推測しなければならない点もあり、迷うことも多くありました。

レストアとは当時の技術者と対話すること

にっちゃんの取材中、何度か聞いたのが「当時のデザインや設計を知ることで、今のクルマづくりにはないノウハウを学ぶ」という言葉を聞きました。普通に考えれば、技術が進歩している今なら、当時のクルマを直すのはラクになっているはず、と思い込んでいました。しかし、クラブが再生しているクルマは「市販車をベースにしたモータースポーツカー」。いわば、当時の技術の粋の結晶であり、一般の生産ラインには組み込まれない特別な仕様も数多く取り入れられています。

今よりも工具や機械が不便だった時代、技術者の知恵と経験による数々の工夫は、今見ても驚くような手法だったりするそうです。「レストア車を通じて彼らがどのように考えてクルマを作っていたか、それを教えてもらっている」と話しているメンバーもいました。

レストア作業も折り返し地点。次回は、いよいよ組み立て、そして試走です。お楽しみに!

コラム:過去のレストア車紹介

[2011年再生] ダットサン 富士号・桜号

1958年のモービルガス豪州一周ラリー参加車両。神奈川県厚木市の日産テクニカルセンター設立30周年だったため、グローバル化の象徴となるクルマ=日産初の海外モータースポーツ参加車両ということで、この2台を選定。車体に書かれているイラストは、クルマの試作を行っている部署の方が、当時の手書き感を再現して描き上げた自信作。