マスターテクニシャン File:08

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GT-Rのすべてを支える最後の砦 愛知日産自動車株式会社 熱田店 桂 章之(かつら あきゆき)さん ※2012年1月31日時点での所属店です

他愛もない会話が整備に生きる

2011年秋、日産グローバル本社に集まった整備士の中に桂さんの顔も並ぶ。マスターテクニシャン制度がスタートして5年間、途切れることなく資格の更新を達成した日産整備士界のトップに立つメカニックの表彰式だ。
「クルマのことはなぜかすぐに覚えて、忘れないんです。学生時代、歴史上の人物は名前も顔もまったく覚えられなかったのに」そう話す桂さんは、多くの資格試験を今まで一度も落とすことなく取得し続け、GT-R専門の日産ハイパフォーマンスセンター認定整備士をしている。

「受付から納車まで、GT-Rのお客さまは私がすべてを担当します。こうすることで、直接お客さまにお聞きした話を整備に生かしています。たとえば、サーキット走行の直後はすぐに保証点検をしますし、ほとんど車庫に眠っているクルマはバッテリーの点検に慎重になります。『どのように使われているか』は整備をするうえでとても重要です。さらに、GT-Rは300km/hまで出せるスーパーカー。専用の整備項目があり、街中走行に適した調整が必要なこともあるんですよ」

「お客さまに顔を覚えてもらい、名前を呼んで来店されるとうれしいです」と話す

スーパーカーを整備する思い

GT-Rのコンセプトは「あらゆるシーンで最高のパフォーマンスを提供する新次元のスーパーカー」。そのクルマを整備する桂さんの手にはどんな思いが込められているのだろう。

「GT-Rは、クルマ自体が毎年毎年進化しています。そんなクルマ、ほかにはないんじゃないでしょうか。技術も進歩するので、私たちも一緒に進歩していかなければならない。その大変さはありますが、進化し続けるクルマを誇りに思っています。これだけの大きな進化を遂げたとアピールできる、最先端の顔ですから。
お客さまもその時・その年のGT-Rを気に入って乗っていらっしゃる。いいですよね。クルマ自体が好きな方が本当に多いです。いろんなところから新しい情報を収集されていて、他社のスポーツカーの話など、私より断然詳しくて勉強になります。『次に出るクルマはどうなるんだろう』という話には花が咲きますね」

資格を持った者だけが着ることを許される専用のつなぎ

最後の砦として

桂さんは一時店舗を離れ、メーカーにある販売会社の修理を支援する部門にいた。ここで学んだことはたくさんあるという。

「この部門では販売会社の修理支援や現場研修をしました。研修では、特に問診に力をいれましたね。お客さまのカーライフとクルマに関して、どういうお話を聞くと整備に反映できるかなど、研修に参加したメカニックたちに細かいところまで指導しました。たとえば、『燃費が悪い』というお話でも、故障で燃料がもれてしまっているということもあれば、タイヤの寿命が原因という場合もあります。いろんな角度からクルマを見ることを指導するんです。
また、修理支援を担当したことで人間的にも成長できました。難解なものが集まる場所にいるということは、私が修理をするための『最後の砦』なんです。私が修理できない、となれば終わりになってしまう。必ず直してお客さまの元へ返したいと、そう強く強く思っていました。それは、今までもこれからも変わりません」

足回りをキレイにすると、クルマがキレイに見えます。タイヤを外したときには、内側までキレイにしてお返ししています。手の届かない部分は私がキレイにします!