
いよいよ予選の第1日目がスタートした。予選のスケジュールは夜の7時から始まり最初のセッションが午後9時までの2時間。そして、1時間のインターバルを置いて10時から2時間30分のセカンドセッションが行われる。2日目は、セカンドセッションが2時間となり、2日間で合計8時間半かけて決勝のスターティンググリッドを決める。
8時間半と聞けば、充分すぎる予選時間があるように思われるかもしれないが、ここル・マンのサルテ・サーキットというのは、年に数日だけ公道を閉鎖させて作られるサーキットであり、他のサーキットと違って事前のテストを行うことが出来ないために、各チームは予選のタイムアタックを行いながらマシンのセッティングを行わなくてはならない。
また、ル・マンのサルテ・サーキットは、1周の距離が13.6キロもあるために1周のラップタイムが他のサーキットに比べ4倍くらいかかる。これも予選の時間を短くしているもう一つの要因だ。マシンのセッティングを終え、本来のタイムアタックに移るまでにトラブルに見舞われたり、クラッシュなどでマシンにダメージを受けたりすると、これが大きなタイムロスとなって、後々まで影響を及ぼす結果となってしまう。
ル・マンでは、この季節、午後10時を過ぎないと、あたりが暗くならないが、日が落ちて、完全にあたりに夜のとばりが降りてから参加しているドライバーの総ては規定に従って夜のセッションを走行しなくてはならないという規定がある。
マシンセッティング、タイムアタック、そしてナイトセッションの規定ラップのクリアーをこなさなくてはならない。本当にやるべきことが多い。総てが順調に進んでこそ初めてライバルとの闘いができる。参加している誰もがそのことを理解してはいるのだが、実際にはそれがうまくいかない。だからこそ、何年も何年もこのル・マンにチャレンジする価値があるのかも知れない。
午後7時。平日というのにグランドスタンドには多くの観客がつめかけていた。その目前、独特のファンが鳴り響き、1995年のル・マン24時間レース予選1日目第1セッションが開始された。日本では信じられないほどまだ日が高い。時間が経過するにつれてラップタイムがだんだんと短縮されてきた。1時間が経過する頃には、セッティングを完了たチームがタイムアタックを開始し始め、1周4分のラップタイムの壁を突破して3分台のタイムに突入した。
やはり、予選の主導権を握ってトップタイムをたたき出していたのはWSCクラスのスポーツカー、地元のクラージュちチームがまずは、暫定予選結果1、2番手を奪取、それに評判通りの速さを見せたGT1クラスのマクラーレンが3番手に続いた。
期待の日本勢は、ホンダのNSXの3台のうち1台がミッションオイルの異常上昇、1台が電気系のトラブルを抱えていた。高橋国光を中心としたチーム・国光のGT2クラスNSXは順調にプログラムを消化。 日産のエースチーム、カーナンバー23がエンジン冷却水漏れからオーバーヒートを起こし、ヘッドガスケットを破損、エンジン交換をしなくてはならなくなった。
メカニックの懸命な作業によってスカイラインのカーナンバー23は、素早くエンジンを交換。第2セッションにやや食い込んだものの、再び予選に復帰した。いかにしてトラブルに対処し、そして戦列に復帰するか、それはチームの総合力が試されるときなのだ。一方、カーナンバー22は、順調にプログラムを消化していた。
サードチームのスープラ、MC8Rは、セッティングを中心として第1セッションをこなした。
今回、16回目の参加であるル・マンの大ベテラン寺田陽次郎が乗り込むマツダDG3は、さすがにル・マンの闘い方を心得ていて、日本勢の最上位、11番手で最初のセッションを終えて、順調さをアピールしていた。このDG3のカラーリングは1991年にマツダワークスチームが日本チームとしては史上初の総合優勝を成し遂げた時と同じカラーリングを施している。
1時間のインターバルは、あっと言う間に過ぎ、暗くなり始めたサーキットに再びレーシングマシン達のエキゾウストサウンドが響いた。強烈なライトを点灯しながら、まさに闇を切り裂くようにコースをマシンが疾走する。
クラージュチームは、第1セッションで叩きだしたタイムでそのまま暫定トップの座を守った。しかし、2番手にはドイツの強豪チームクレマーのポルシェK8がアップしてきて2台のクラージュの間に割って入った。そして、4番手からは4台のマクラーレンがずらりと並び予選2日目がどう展開してゆくのか興味をそそる結果となった。
日本勢のトップは、依然マツダだったが、暫定順位は16番手。20番手に羽根幸浩選手が乗り込むGT1クラスのポルシェ、21番手にミッショントラブルに苦しめられた、ターボエンジンを搭載したカーナンバー47のNSX、22番手にトヨタ・スープラ、25番手にMC8R,30番手にカーナンバー23のスカイライン、34番手にチーム国光のNSX、37番手にカーナンバー22のスカイライン、そして39番手に電気系のトラブルに悩まされている自然吸気エンジン搭載のNSXがつけ、予選第1日目は、終了した。
