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| 聞き手: |
みうらさん、聞くところによるとクルマの免許はお持ちじゃないそうで。 |
| みうらさん: |
原付免許も数十年前に切れました(笑)。 |
| 聞き手: |
くるまあるきインタビュー初の、クルマを運転しないゲストというわけですね(笑)。免許を取らなかった理由って何かあるんですか? |
| みうらさん: |
高校時代をまっとうに過ごしてたら普通に免許欲しくなるんだろうけど、部屋で自作の曲ばっかりつくってるような高校生だったから、クルマには興味なかったんですよ。ロックには、クルマじゃなくてバイクのイメージがあったしね。だけど、バイクでもデカイのは怖いから、50ccで。当時、京都の路面を走っていた市電を追い越したりして、ロックを感じてました。 |
| 聞き手: |
市電より速いぞって(笑)。ということは、今後もクルマの免許は必要ナシですか? |
| みうらさん: |
それが最近、クルマを運転する夢をよく見る(笑)。本気でクルマの免許を取ろうかって、40過ぎてから思うようになったんです。 |
| 聞き手: |
それは、どうして? |
| みうらさん: |
例えば、日本のトンマな祭り‥‥「とんまつり」って名付けたんですけど、それを取材しようと思うと、どうしてもヘンピなところに出かけなければならない。1日にバスが2本しかないような地域だったりもするので、スケジュールしっかり立てないと大変なことになります。タクシー代もばかにならないし。 |
| 聞き手: |
誰も行かないような場所にこそ、みうらさんの目指すべきものが多いんですね? |
| みうらさん: |
そうです。今の日本でいわゆる秘境というのは「おすすめの秘境」として紹介されてしまってるから、本当の意味での秘境は「ヘンピな場所」しか残ってない。そういう場所ばかり巡るわけだから、やっぱり免許とったほうがいいに決まってる。クルマは便利なんだと初めて気がつきました(笑)。 |
| 聞き手: |
「クルマは便利」って、なんか新鮮ですね(笑)。日本中を旅してらっしゃっるだけに、実感こもってます。ところで、みうらさんの取材テーマのひとつである「とんまつり」について、簡単に説明していただきたいのですが。 |
| みうらさん: |
いわゆる奇祭っていうのは、けっこう紹介されていますよね。僕が集めているのは、地元の人しか知らないようなマイナーなやつ。その中でもシリアスなものじゃなく、どこか笑えるトンマな祭りです。 |
| 聞き手: |
そういう祭りがどこそこで行われているという情報を、まとめて知る方法はあるんですか? |
| みうらさん: |
それが無かったからこそ、僕がつくろうと思ったんです。「とんまつりJAPAN」という本を2年ほど前に集英社から出しました。世界で唯一のトンマな祭りだけのガイドでしょうね。そこで紹介するまではインターネットにもなかなか登場しないような祭りで、たとえ見つけたとしても説明が1行だったり。それは、全世界で話題になってないってことを意味するんじゃないかなと思ってワクワクしました(笑)。 |
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| 聞き手: |
なるほど、全世界につながってるネットの世界からこぼれ落ちているわけですからね。 |
| みうらさん: |
そうなると、もう自分で行かなきゃダメだという使命感がうまれてね。たまたまインターネットで見つけたとしても、それでわかった気になるのは大きな間違いで、実際はものすごい不便の末に、ものすごい人間臭さを目の当たりにする旅なんです。それを写真に撮って、毎年恒例になった「ザ・スライドショー」というイベントで報告しているわけです。 |
| 聞き手: |
ものすごい労力ですね。 |
| みうらさん: |
その無駄な感じがウケるんだと思いますよ。拍手が起こる。単なる情報じゃなくて、実際にわざわざヘンピな場所に行ったんだって事実が重要なんでしょう。普通は、行きませんから(笑)。 |
| 聞き手: |
行ってみたら期待はずれということもあるんですか? |
| みうらさん: |
だいたいは期待はずれ(笑)。「とんまつり」ではないんだけど、十戒で有名な「モーゼの墓」とか「キリストの墓」が、実は日本にあって‥‥。 |
| 聞き手: |
キリストは聞いた事ありましたが、なんとモーゼまで! |
| みうらさん: |
なぜか、日本にある(笑)。で、クリスマスの2日前に「キリストの墓」を見に青森の十和田湖の近くまで行ったんですが、村の人も知らないような場所でね。何とかたどり着いたけど、そこには誰もいない。ただ十字架が2本立っていました。もう1本はキリストの弟の
イスキリの墓だって(笑)。ひとつも盛り上がってない。 |
| 聞き手: |
クリスマスだというのに、ですか(笑)。 |
| みうらさん: |
そのマイナーさに、いつも脱力感を感じます。それでも、その脱力感が好きだし、ネタになるんですよ。モーゼのほうは石川県の名も無い小高い丘にあるんだけど、山全体が「モーゼの墓」って書いてあるだけ。なんやそれ(笑)。モーゼはん、どこに埋まっとんねん? という感じで。 |
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| 聞き手: |
あはは。興味に対してすぐにアクションを起こすみうらさんって、学究肌タイプの人なんでしょうかねえ? おじいさんが歴史家でいらっしゃったというウワサも小耳に挟んだのですが。 |
| みうらさん: |
うちのおじいちゃん、あくまでも自称(笑)。いわゆる町の歴史家だったんですよ。ベレー帽かぶって、うさん臭い。ある日、おじいちゃんが「発掘やでえ」って誘ってくれて、ふたりで腕章つけて古い寺の発掘現場に関係者として入ってったことがあるんです。老人と小学生が(笑)。京都の西寺(さいじ)の跡地なんですが、その時に出土した瓦を今でも持ってますよ。 |
| 聞き手: |
やはり、研究者の血を引き継いでいるんでしょうか。 |
| みうらさん: |
研究者かどうかはともかく、似てるかもしれない。おじいちゃんは小学校の校長先生を引退してから、なぜか「拓本」の本を出して親戚に売りつける(笑)、みたいなことやってましたからね。そういえば、最近ベレー帽買ってね。そろそろ僕も、うさん臭いベレー入ってきてる(笑)。 |
| 聞き手: |
ベレーな人!(笑) |
| みうらさん: |
顔にシミとかできて、最近グッとええ感じになってきてますよ(笑)。「とんまつり」や仏像が立派な研究とは思ってないんだけど、そういうものって突き詰めていくと、どんどん民俗学みたいなことになってしまう。 |
| 聞き手: |
柳田国男ですね。 |
| みうらさん: |
そうそう。今なら、荒俣さんとか。でも、自分の場合、入口は同じだとしても出口はちがうほうがいいかなと思ってます。誰かが既にやってたら、つまらない。それに、取材の対象が愉快なものじゃないと、興味が湧かないというのもあります。アタマに「お笑い」とつくような発表のかたちをとりたいんです。 |
| 聞き手: |
よくわかります。なにしろ、「とんまつり」ですからね(笑)。
さて、恒例として、ゲストの皆さんにおすすめの場所をご紹介いただいているのですが、みうらさんにはぜひ、その「とんまつり」を。 |
| みうらさん: |
「とんまつりJAPAN」を1冊差し上げますので、お好きなものを選んでみてくださいよ。このページではヤバそうなものもありますので。 |
| 聞き手: |
(ページをめくり)あ、本当だ‥‥。では、この中から4つほどチョイスさせてください。 |
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| 聞き手: |
(笑)とんますぎる! でも、行ってみたい! |
| みうらさん: |
開催日がけっこう変わる事もあるので、もし出かけるなら事前に確かめたほうがいいですよ。 |
| 聞き手: |
それにしても、こういう祭りにも、それぞれちゃんと由来はあるわけですよね? |
| みうらさん: |
基本のほとんどは「五穀豊穣」という事なんだけど、今では祭りのスタイルだけが残ってる感じです。例えば祭りの写真で、ローソンの前に大きなちんちんのハリガタが写ってるやつがあるんですが、そこではもう元々の意味は消えちゃってる。アレは本来、畑のあぜ道を通るべきものだから。 |
| 聞き手: |
なるほど‥‥。それにしても、この「とんまつり」にしても「いやげ物(もらって困る土産)」にしても、みうらさんがネーミングしてくれる事で一発でコンセプトが理解できますね。 |
| みうらさん: |
ネーミングすると、そのコレクションの世界で戦うやつがいなくなるんです。子供の頃、怪獣が好きで集めていたんだけど、お金持ちの家の子にはかなわない。たくさん持ってるやつが勝ちの世界だから。その後も、ボブ・ディランのレコードをフランスやイタリアにまで行って買い集めたけど、そっちも一番にはなれない。だんだん、むなしくなってくるんですよ。 |
| 聞き手: |
ボブ・ディランは、それこそ世界的なミュージシャンですから敵も多いでしょう。 |
| みうらさん: |
それなら、自分で土俵をつくればいいと気がついたんです。「カスハガ(意味不明の絵はがき)」「とんまつり」ってジャンル名つけて、自分が基準をつくる。誰かが「これってカスハガだよね?」って持ってきたとしても、それは違うね! って言える。 |
| 聞き手: |
みうらさんがその道の唯一の大家、オレが掟だって事ですね? |
| みうらさん: |
そう、「ハマー、オレが掟だ!」って感じ。これで、ずいぶんラクチンになりました。昔からずっと似たような事をやってたけど、広くウケるためのアレンジ能力がなかった。ネーミングは、プレゼンテーションのひとつでもあるんですね。 |
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| 聞き手: |
「マイブーム」という言葉も、みうらさんですよね。 |
| みうらさん: |
これまでやってきた全てをひっくるめる言葉でね。最初は自分だけの興味でも、それが流行らないとおもしろくないから。「マイ」なことが「ブーム」にならないとね。キャバクラのねえちゃんにウケなきゃアカンって立場です。仏像も「見仏記」みたいな方法をとれば、引きずりこめる。落語もいきなりじゃなくて、枕があるでしょ。例えば、弥勒菩薩はエマニエル夫人に似てる、みたいなとっかかりがあれば、話聞いてもらえますしね。 |
| 聞き手: |
なるほど、それもアレンジのひとつですね。エマニエル夫人で、グッときました。 |
| みうらさん: |
若い頃は、糸井重里さんのとこに、いきなりオリジナルなフォークの曲を100曲くらいカセットで持ち込んだりした事もありました。今考えると、メーワクな事やってたなあと(笑)。ネタは昔からあるんだけど、当時はプレゼンテーションが下手だったんですね。 |
| 聞き手: |
若い頃って、量とか大声で勝負したがりますよね。よくわかります。 |