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くるまあるき賛成派 第11回
みうらじゅんさん:前編
「とんまつり」のためなら、
    免許を取ってもいい。

  みうらじゅん
1958年京都生まれ。
武蔵野美術大学在学中「ガロ」で漫画家デビュー。講談社ちばてつや賞受賞。
イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、プロデュース業など多方面で活躍。
独特の切り口によるコレクション「カスハガ」「いやげ物」などを世に問い、「マイブーム」という造語が97年度日本流行語大賞に選ばれる。主な著書に「マイブームの魂」「見仏記」「日本崖っぷち大賞 」など。音楽CDも多数発表し、2001年にベスト盤「青春ノイローゼ」をリリース。
いとうせいこう氏との恒例トークライブ「ザ・スライドショー」も好評で、ライブの模様を収めたDVD「コンプリートボックス」を10月11日に発売した。

今回は、いつものプロフィールスペースがとても窮屈に感じられました。ひとつやふたつの肩書きでは、到底まとめることができない。そんなゲスト、みうらじゅんさんの仕事場におじゃましてお話をうかがいます。壁にかかる天狗のお面や、仏像たち、そしてポスターの中の浜崎あゆみに見つめられながらのインタビューです。


 
   
聞き手: みうらさん、聞くところによるとクルマの免許はお持ちじゃないそうで。
みうらさん: 原付免許も数十年前に切れました(笑)。
聞き手: くるまあるきインタビュー初の、クルマを運転しないゲストというわけですね(笑)。免許を取らなかった理由って何かあるんですか?
みうらさん: 高校時代をまっとうに過ごしてたら普通に免許欲しくなるんだろうけど、部屋で自作の曲ばっかりつくってるような高校生だったから、クルマには興味なかったんですよ。ロックには、クルマじゃなくてバイクのイメージがあったしね。だけど、バイクでもデカイのは怖いから、50ccで。当時、京都の路面を走っていた市電を追い越したりして、ロックを感じてました。
聞き手: 市電より速いぞって(笑)。ということは、今後もクルマの免許は必要ナシですか?
みうらさん: それが最近、クルマを運転する夢をよく見る(笑)。本気でクルマの免許を取ろうかって、40過ぎてから思うようになったんです。
聞き手: それは、どうして?
みうらさん: 例えば、日本のトンマな祭り‥‥「とんまつり」って名付けたんですけど、それを取材しようと思うと、どうしてもヘンピなところに出かけなければならない。1日にバスが2本しかないような地域だったりもするので、スケジュールしっかり立てないと大変なことになります。タクシー代もばかにならないし。
聞き手: 誰も行かないような場所にこそ、みうらさんの目指すべきものが多いんですね?
みうらさん: そうです。今の日本でいわゆる秘境というのは「おすすめの秘境」として紹介されてしまってるから、本当の意味での秘境は「ヘンピな場所」しか残ってない。そういう場所ばかり巡るわけだから、やっぱり免許とったほうがいいに決まってる。クルマは便利なんだと初めて気がつきました(笑)。
聞き手: 「クルマは便利」って、なんか新鮮ですね(笑)。日本中を旅してらっしゃっるだけに、実感こもってます。ところで、みうらさんの取材テーマのひとつである「とんまつり」について、簡単に説明していただきたいのですが。
みうらさん: いわゆる奇祭っていうのは、けっこう紹介されていますよね。僕が集めているのは、地元の人しか知らないようなマイナーなやつ。その中でもシリアスなものじゃなく、どこか笑えるトンマな祭りです。
聞き手: そういう祭りがどこそこで行われているという情報を、まとめて知る方法はあるんですか?
みうらさん: それが無かったからこそ、僕がつくろうと思ったんです。「とんまつりJAPAN」という本を2年ほど前に集英社から出しました。世界で唯一のトンマな祭りだけのガイドでしょうね。そこで紹介するまではインターネットにもなかなか登場しないような祭りで、たとえ見つけたとしても説明が1行だったり。それは、全世界で話題になってないってことを意味するんじゃないかなと思ってワクワクしました(笑)。
   
 
   
聞き手: なるほど、全世界につながってるネットの世界からこぼれ落ちているわけですからね。
みうらさん: そうなると、もう自分で行かなきゃダメだという使命感がうまれてね。たまたまインターネットで見つけたとしても、それでわかった気になるのは大きな間違いで、実際はものすごい不便の末に、ものすごい人間臭さを目の当たりにする旅なんです。それを写真に撮って、毎年恒例になった「ザ・スライドショー」というイベントで報告しているわけです。
聞き手: ものすごい労力ですね。
みうらさん: その無駄な感じがウケるんだと思いますよ。拍手が起こる。単なる情報じゃなくて、実際にわざわざヘンピな場所に行ったんだって事実が重要なんでしょう。普通は、行きませんから(笑)。
聞き手: 行ってみたら期待はずれということもあるんですか?
みうらさん: だいたいは期待はずれ(笑)。「とんまつり」ではないんだけど、十戒で有名な「モーゼの墓」とか「キリストの墓」が、実は日本にあって‥‥。
聞き手: キリストは聞いた事ありましたが、なんとモーゼまで!
みうらさん: なぜか、日本にある(笑)。で、クリスマスの2日前に「キリストの墓」を見に青森の十和田湖の近くまで行ったんですが、村の人も知らないような場所でね。何とかたどり着いたけど、そこには誰もいない。ただ十字架が2本立っていました。もう1本はキリストの弟の イスキリの墓だって(笑)。ひとつも盛り上がってない。
聞き手: クリスマスだというのに、ですか(笑)。
みうらさん: そのマイナーさに、いつも脱力感を感じます。それでも、その脱力感が好きだし、ネタになるんですよ。モーゼのほうは石川県の名も無い小高い丘にあるんだけど、山全体が「モーゼの墓」って書いてあるだけ。なんやそれ(笑)。モーゼはん、どこに埋まっとんねん? という感じで。
   
 
   
聞き手: あはは。興味に対してすぐにアクションを起こすみうらさんって、学究肌タイプの人なんでしょうかねえ? おじいさんが歴史家でいらっしゃったというウワサも小耳に挟んだのですが。
みうらさん: うちのおじいちゃん、あくまでも自称(笑)。いわゆる町の歴史家だったんですよ。ベレー帽かぶって、うさん臭い。ある日、おじいちゃんが「発掘やでえ」って誘ってくれて、ふたりで腕章つけて古い寺の発掘現場に関係者として入ってったことがあるんです。老人と小学生が(笑)。京都の西寺(さいじ)の跡地なんですが、その時に出土した瓦を今でも持ってますよ。
聞き手: やはり、研究者の血を引き継いでいるんでしょうか。
みうらさん: 研究者かどうかはともかく、似てるかもしれない。おじいちゃんは小学校の校長先生を引退してから、なぜか「拓本」の本を出して親戚に売りつける(笑)、みたいなことやってましたからね。そういえば、最近ベレー帽買ってね。そろそろ僕も、うさん臭いベレー入ってきてる(笑)。
聞き手: ベレーな人!(笑)
みうらさん: 顔にシミとかできて、最近グッとええ感じになってきてますよ(笑)。「とんまつり」や仏像が立派な研究とは思ってないんだけど、そういうものって突き詰めていくと、どんどん民俗学みたいなことになってしまう。
聞き手: 柳田国男ですね。
みうらさん: そうそう。今なら、荒俣さんとか。でも、自分の場合、入口は同じだとしても出口はちがうほうがいいかなと思ってます。誰かが既にやってたら、つまらない。それに、取材の対象が愉快なものじゃないと、興味が湧かないというのもあります。アタマに「お笑い」とつくような発表のかたちをとりたいんです。
聞き手: よくわかります。なにしろ、「とんまつり」ですからね(笑)。
さて、恒例として、ゲストの皆さんにおすすめの場所をご紹介いただいているのですが、みうらさんにはぜひ、その「とんまつり」を。
みうらさん: 「とんまつりJAPAN」を1冊差し上げますので、お好きなものを選んでみてくださいよ。このページではヤバそうなものもありますので。
聞き手: (ページをめくり)あ、本当だ‥‥。では、この中から4つほどチョイスさせてください。

MINIとんまつりJAPAN


■写真をクリックすると、大きなサイズでご覧いただけます■


笑い祭り
[笑え! 笑え!アハハハハハハッ!]
場所:和歌山県日高郡川辺町・丹生(にう)神社
開催日:10月10日

ソレが始まるまでは、ごくオーソドックな祭りに思えたのだが‥‥。鈴振りと呼ばれるド派手な格好の老人が「笑え! 笑え! アハハハハハハッ!」と、見物人に笑いを強要しながら町を練り歩き出したのだ! その顔は白塗りで、バカ殿のような太い八の字まゆ毛、両ほっぺには赤い絵の具で「笑」と書かれている。こちらとしても、もう笑うしか対処が見つからず、気がつくとツッ込む側ではなく笑い軍団に混ざって街を練り歩いていたのだ。

抜き穂祭
[文字通りの一人相撲]
場所:愛媛県越智郡大三島町・大山祇神社
開催日:10月中旬(旧暦9月9日)
一人相撲は、旧暦5月5日のお田植え祭りでも行われます。

「結局、今回はお前の一人相撲だったな」という言い回しがあるが、この祭りでは、文字通りの一人相撲をとってる人がいるのだ。土俵上には、一力山と呼ばれる力士役と行事のふたりのみ。一力山の相手となる見えない力士は、精霊山という神様らしい。軍配が返ると、一力山は見えない相手にまわしを取られたり土俵際に追い込まれたり、逆に吊り上げたり。ジャッキーチェンばりのアクションも飛び出し、場内大拍手。そして大爆笑だ!


子供強飯式(こどもごうはんしき)
[1杯2杯にあらず、75杯!]
場所:栃木県日光市・生岡(いくおか)神社
開催日:11月25日

まるでコントの鬼瓦権三のようなメークをした子供ふたりが登場。里イモの山を前にトンマな白装束で正座した大人ふたりに向かって、こう威張る。「1杯2杯にあらず、75杯!」「一粒も残しては、ならん!」‥‥そりゃムチャでっせ。そこに神官が現れ、ふたりの口に里イモを突っ込むのだが、すぐにギブアップ。しかし白装束男たちの苦難はまだつづく。馬の顔がついた杖のようなものを股にはさみ、ギャロップギャロップ♪を3周、畳の上でやらされるのだ!


水止舞い(みずどめまい)
[長雨を止めるための祭りなのだが‥‥]
場所:東京都大田区・巌正寺
開催日:7月14日

東京にも「とんまつり」がある。荒縄でつくったふたつの米俵のようなものに、それぞれ男が入り込む。その姿はまるで、あの黒ヒゲ危機一髪ゲームのようだ。道路上に米俵ごとゴロンと横にされたふたりは、ほら貝を「ブォー!」と吹く。やがて、数人の男たちに持ち上げられて少しだけ移動し、また放置される。そして「ブォーッ!」。これを、100m先にある境内にたどり着くまでくり返すのだ。まったく、どーかしてるよ!?

*祭りの写真はすべて、撮影者であるみうら氏の許可を得て「とんまつりJAPAN(集英社)」から転載したものです。

聞き手: (笑)とんますぎる! でも、行ってみたい!
みうらさん: 開催日がけっこう変わる事もあるので、もし出かけるなら事前に確かめたほうがいいですよ。
聞き手: それにしても、こういう祭りにも、それぞれちゃんと由来はあるわけですよね?
みうらさん: 基本のほとんどは「五穀豊穣」という事なんだけど、今では祭りのスタイルだけが残ってる感じです。例えば祭りの写真で、ローソンの前に大きなちんちんのハリガタが写ってるやつがあるんですが、そこではもう元々の意味は消えちゃってる。アレは本来、畑のあぜ道を通るべきものだから。
聞き手: なるほど‥‥。それにしても、この「とんまつり」にしても「いやげ物(もらって困る土産)」にしても、みうらさんがネーミングしてくれる事で一発でコンセプトが理解できますね。
みうらさん: ネーミングすると、そのコレクションの世界で戦うやつがいなくなるんです。子供の頃、怪獣が好きで集めていたんだけど、お金持ちの家の子にはかなわない。たくさん持ってるやつが勝ちの世界だから。その後も、ボブ・ディランのレコードをフランスやイタリアにまで行って買い集めたけど、そっちも一番にはなれない。だんだん、むなしくなってくるんですよ。
聞き手: ボブ・ディランは、それこそ世界的なミュージシャンですから敵も多いでしょう。
みうらさん: それなら、自分で土俵をつくればいいと気がついたんです。「カスハガ(意味不明の絵はがき)」「とんまつり」ってジャンル名つけて、自分が基準をつくる。誰かが「これってカスハガだよね?」って持ってきたとしても、それは違うね! って言える。
聞き手: みうらさんがその道の唯一の大家、オレが掟だって事ですね?
みうらさん: そう、「ハマー、オレが掟だ!」って感じ。これで、ずいぶんラクチンになりました。昔からずっと似たような事をやってたけど、広くウケるためのアレンジ能力がなかった。ネーミングは、プレゼンテーションのひとつでもあるんですね。
   
 
聞き手: 「マイブーム」という言葉も、みうらさんですよね。
みうらさん: これまでやってきた全てをひっくるめる言葉でね。最初は自分だけの興味でも、それが流行らないとおもしろくないから。「マイ」なことが「ブーム」にならないとね。キャバクラのねえちゃんにウケなきゃアカンって立場です。仏像も「見仏記」みたいな方法をとれば、引きずりこめる。落語もいきなりじゃなくて、枕があるでしょ。例えば、弥勒菩薩はエマニエル夫人に似てる、みたいなとっかかりがあれば、話聞いてもらえますしね。
聞き手: なるほど、それもアレンジのひとつですね。エマニエル夫人で、グッときました。
みうらさん: 若い頃は、糸井重里さんのとこに、いきなりオリジナルなフォークの曲を100曲くらいカセットで持ち込んだりした事もありました。今考えると、メーワクな事やってたなあと(笑)。ネタは昔からあるんだけど、当時はプレゼンテーションが下手だったんですね。
聞き手: 若い頃って、量とか大声で勝負したがりますよね。よくわかります。


「くるまあるき」というネーミングも、みうらさんの考え方と似ています。多くの人が何となく気づきかけていた「名前のないモノゴト」に、バシッと短いネーミングをしてしまう。みうらさんのように大家として認められるためには、さらなる継続が大事なようですね。後編のお話も、今から楽しみです。

<次回 更新日は11月5日予定です>
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